向かい合って立つ男と女。
体と心が響きあって求め合う。
恋は血と肉の求め合いによく似ている。

恍惚を呼ぶ飛沫する血のように。
眠る野性に火をつける。
彼女の胸を引き裂いて彼の懐切り裂いて　
互いの腑貪るように。
互いに想い憎み合う。

迸る痛みに虜になる時。
二人の恋が癖になる時。
流れる血が底尽きるまで。
溢れる涙が枯れ果てるまで。
沸き上がる憎悪が呆れと化すまで
貪るように絡みつき　仮初めの言葉塗りたくる。

互いにその血を飲み干して
互いの肉を喰らい尽くして
そこに残ったのは醜悪の
恍惚に果てた２人の嗤顔。

繰り返される無価値の抱擁。
恋という安価で陳腐なおとぎ話。
手に取ったのは無知で愚かなホモサピエンス。

花はみんな美しい。　美しくて薄命だ
花開くまでの成長期　ゆっくりゆっくり育ってく
伸びゆく芽たちの愛らしさ　健気で直向きな可愛らしさ

開花の時地上に降り立つ女神の美
その瞬間の美しさはフローラの笑顔
咲き乱れる花と乱れ差す天の光
たった一輪でも　視界を埋め尽くしていても
そこにある花はいつだって輝いてる

長い長い沈黙を経て咲き乱れた地上の美は
散りゆく運命（ｻﾀﾞﾒ）に抗う事無く
消えゆくその瞬間でさえ美しい。

天は花から自由を奪った！
代わりに与えたのは至高の美
目眩く美の七変化

天は獣に自由を与えた！
血を流された我らが持つのは
数多の死の上に立ち　屍むさぼる生き様と
老いて朽ちゆく醜い死に様

愛という名のどす黒い鎖。
断ち切るには無駄に堅すぎる。
はね除けるには少し重すぎる。

逃れようとすればするほどそれはしつこく絡まって
必死にもがいて抗うともっと深く食い込んでくる。

求めた愛は蜃気楼。
白い鎖はつかめなかった。
理想をかき消す溢れる血。
縛り付けて食い込んで
理想から現実に引き戻す。

腐った臭いの汚い鎖。
しがらみに絡まるこの心。
光を見据え求めた果てに
待っていたのがこの仕打ちなのか！

一体何を求めるというのか。
注がれる愛がのしかかる。
幾十に重なるこの鎖が全てを奈落に引きずり降ろす。

愛を注ぐはエゴイスト。
飲み込んで血のサクリファイス。
古い鎖が朽ちたとき　この血が汚染されたとき。
もっと強く食い込んで　溢れる血が鎖になる。

この血から生まれた鎖は　やはり白い鎖には成れず
この肉から生まれた命を縛り付けていた。

命は生まれるその前から
ひとつの爆弾を持って生まれる
寿命という時限を持つ
運命という名前を持つ
正確無比な時限爆弾。

全ては定められた道のまま。
チクタクチクタチク時を刻み。
静かに鼓動を繰り返すそれは。
目覚めの時には容赦しない。

その爆弾は抗えぬ運命
その時限は動かせぬ寿命
動き出せば全てが無駄。
自分を抑えても爆弾の刻は変わらない

それでも抗おうと言うのなら。
お好きにどうぞ悪足掻き。

時限爆弾は今日も唯々時を刻む。
止まる事なき死への誘い。
決して急ぐことはなく、決して遅れることもなく
無情にチクタクチクタクと
カウントダウンを刻んでゆく。

神という名の縋り藁
愛という名の茨道
運命の奥に秘められた
空という名の魅惑の地

全て消えてしまえばいい
喜怒哀楽の蜃気楼　もうこれ以上視たくない
全てを奪い取るがいい
涙は枯れてカタルシス　そこに有るのは穢れだけ

語りかけるは逆十字
誘い堕とす夢の中
囁き歌う悪魔族
堕天使に捧ぐ子守歌
奈落を見せて逆十字
恍惚の果ての自己陶酔

十字架汚してカタルシス
自尊と自愛のナルシズム
望む物はただひとつ　
歪んだ社会のカタストロフィー